統計データによれば、訪日中国人観光客の数は2013年前後を境に急増し、その後も継続的な成長傾向を示しました。特に2013年以降の急激な増加は、中日間の人的交流において重要な転換点となり、日本への関心を飛躍的に高めました。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年から数年間、訪日観光は一時的に停滞しましたが、2024年以降は急速な回復と反発を見せ、再び観光客数が増加しています。
この観光ブームは単なる一時的な旅行需要にとどまらず、長期的な移住や起業の動きにつながっています。何度も訪日した経験を持つ中国人旅行者は、日本の生活環境や文化に親しみを持ち、結果として日本で暮らしたい、さらには事業を展開したいと考える層が増えてきました。特に中国国内の経済環境に不確実性が高まる中、日本の安定した社会制度や大きな市場ポテンシャルが、中国の企業家層にとって魅力的に映っています。
こうした動きを後押ししているのが、日本政府による「経営管理ビザ(起業ビザ)」制度の緩和です。外国人が日本で会社を設立し経営活動を行うためのハードルが低くなり、資本金や事務所要件、ビザ取得の条件が従来よりも柔軟になりました。この施策は日本にとって単なる移民受け入れ策ではなく、優秀な人材と投資を呼び込み、国内経済を活性化させる「人材誘致戦略」と位置付けられています。
結果として、多くの中国企業家が日本に進出し、現地で会社を設立・運営する動きが加速しています。観光を通じて得た「土地勘」や人脈、生活への理解が、実際の移住・起業への決断を後押ししているのです。こうした流れは、日本が直面している人口減少・高齢化という構造的課題への一つの解決策となり得ます。
一方で、日本国内ではこの変化を十分に認識していない層も多く、中国人の移住や起業の増加に驚く声が少なくありません。これは、中日間の情報共有や理解の不足を示すものであり、今後の両国関係における課題の一つといえます。
総じて、訪日観光ブームは単なる旅行需要の増加にとどまらず、日本での定住・起業という新たな潮流を生み出しており、これが日本社会と経済の活力を高める重要な要因となりつつあります。